「生きがいというものは、人間がいきいきと生きていくために、空気と同じようになくてはならないものである。しかし、私たちの生きがいは損なわれやすく、うばい去られやすい」
　本書は、「生きがいという、つかみどころのないような問題を、いろいろな角度から眺めてみて、少しでも事の真相に近づきたい」という、著者の人間への深い関心が源泉となり書かれた一冊です。精神科医としてのハンセン病患者との交流に基づく思想に加え、心理学、文学、哲学などの文献や実例を用いて、「生きがいをもつ人」、「生きがいを失った人」、「新しい生きがいを見いだす人」の心の有り様が多角的に考察されています。
　今日のわが国は、個人や社会にとって、将来の予測が困難な時代に入りつつあると言われています。このような時代だからこそ、『生きがいについて』を読み、皆さんがこれからの時代を生きる上での示唆を得て頂ければと思います。柳田邦男氏による解説も参考になることでしょう。
看護学部　教授　横山京子　　（請求記号　113　カ）